【ねこまたぎ通信】

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「韓半島有事」にわかに現実味 米、イラク戦で先制攻撃正当化

 「イラク後」の北朝鮮攻撃の有無に世界の耳目が注がれ始めた。米国は9・11テロ後、独裁と対峙(たいじ)する手段に先制攻撃を加えてイラク戦争に踏み切り、北朝鮮攻撃に道筋を付けた格好となっているだけでなく、在韓米軍の移転提起や避難訓練実施など「有事」を想定した慌ただしい動きをみせる。北朝鮮金正日総書記軍事独裁色をさらに強め、抗戦の構えだ。「韓半島有事」は本当に起こるのだろうか。
(佐貝祐介)
北朝鮮は抗戦の構え
在韓米軍移転を提起兵士家族が避難訓練
 米政府が最近、韓国・京畿道の東豆川と議政府一帯に駐留する在韓米二師団を今年下半期に漢江以南に移転したいという意向を韓国政府に公式に通報してきたことが四日明らかになった。二師団は北朝鮮の野砲と多連装砲の射程距離内に位置し、北朝鮮軍が侵入した場合は米国の自動的介入を保証する役割をしていただけに、移転が現実となれば、韓半島の軍事的脅威は一気に高まることになる。
 韓国マスコミが韓国政府高官の話として伝えたところによると、未来韓米同盟政策構想共同協議の米側首席代表であるローレス国防副次官補は先月二十四日、韓国側首席代表の車栄九・国防部政策室長と行ったテレビ会議で、下半期に二師団を漢江以南に移転したいという意思を伝えてきたという。

 同高官は、「車室長が『二師団移転は移転先の問題のため不可能であり、北朝鮮核問題の解決後に進めるのが韓米同盟関係のためにも望ましい』と説得したと聞いている」と述べたというが、その一方で「在韓米軍龍山基地(漢江以北のソウル市龍山区)を来年から移転し始めたい」としてきたローレス副次官補の以前からの要請に対しては、驚くべきことに「予算確保の問題などで移転開始には五年以上かかるとみられるが、できるだけ早期に移転できるよう努力する」と答えたという。

 盧武鉉政権が在韓米軍撤収に一貫した反対を表明しないとなれば、これは「韓半島有事」を自ら招く危うさと背中合わせということになる。韓国のこうした政策を問題視する声は、韓国国内でも少なくないが、ここで最も気になるのは、米国がなぜこうした発言をしてきたか、その真意がどこにあるかという点である。

 韓国紙・中央日報は社説で「一つは韓国新政権スタート前後に醸成された反米感情の爆発とそれに便乗したような政権に対する感情的な対応。もう一つは北朝鮮ミサイルと多連装砲の射程内にある在韓米軍の安全を保護すべきとの判断から現実的な必要性を感じたもの」と二つの可能性を指摘している。仮に後者の説が正しいとすれば、米国は「韓半島有事」の準備に入ったとみることができてしまうのだ。

 「韓半島有事」と関連した米国の気になる動きがもう一つある。

 米海兵隊岩国基地山口県岩国市)の基地機関誌「トリイ・テラー」四日付によると、在韓米軍が先月下旬、韓国に住む米国の民間人を同基地に避難させる訓練をしていたことが明らかになった。訓練名「勇敢な海峡」と呼ばれるこの避難訓練は先月二十八日から三十一日にかけて行われ、ソウルの北約四十キロにある在韓米軍のキャンプ・ケーシーから米兵の家族ら百三十二人がC130輸送機や高速輸送機に分乗して岩国基地に到着したという。明らかに「韓半島有事」を想定した訓練といえよう。

 米国防総省のポール・ウルフォウィッツ副長官は六日、米NBC放送に出演し、「北朝鮮はすでに幾つかの核兵器を持っているとみられるが、北朝鮮イラクの状況は全く違う」と述べ、北朝鮮核問題の平和的解決を強調している。

 しかし米国のイラク攻撃は9・11テロ後の米国が自国防衛の手段に先制攻撃を加えたことを意味するといわれ、「核など大量破壊兵器を保有する独裁国家がテロ行為をする可能性がある場合に米国は先制攻撃する」という前例をつくったことにほかならない。米国にとって核を保有し、米国を敵視する「ならずもの国家」北朝鮮が例外であるはずはなく、「イラクの次は北朝鮮」というシナリオは、依然として消えていないのである。

 北朝鮮自身も「韓半島有事」が現実味を帯び始めたと感じ取っている節がある。二日付労働新聞などは、「社会の主導勢力は労働者から軍人に変わってきている」「米帝が侵略を試みてもわれわれ先軍政治と軍事力は一切譲歩・妥協しない」などと主張、軍事独裁色を強めている。

 ある専門家はこう指摘する。「金正日総書記が二月十二日から四月二日までの五十日間も公式の場に姿を見せなかったこと、これまで欠席したことのない最高人民会議を欠席したこと、さらに韓国との南北交流を一切中止していることなどは、戦争が起きないことを前提とした『瀬戸際外交』が米国に通用しなくなる公算が強い、もっといえば米国の対北朝鮮攻撃がなきにしもあらず、という判断が働き、対米戦略の見直しを迫られていることの表れだ」

 イラク戦争長期化の可能性が低くなったいま、「韓半島有事」という緊張感がにわかに増幅し始めている。