【ねこまたぎ通信】

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コンゴで暫定政権発足へ 政府・反政府勢力が合意

 中部アフリカのコンゴ民主共和国政府・反政府勢力代表者が二日、南アフリカのサンシティーで民主化に向けた暫定政権設置案に合意し調印式を行った。アフリカ各国首脳と欧州連合(EU)、国連代表者を集めて行われた今回の合意で、四年半に及ぶ内紛の完全終結を期待する声は大きいが、調印前日にはコンゴ北東部で民間人への新たな大量虐殺事件が発生するなど、民主化への道のりには相当な困難も予想される。
ヨハネスブルク・長野康彦)

調印前日に大量虐殺事件 民主化への道のり、困難も
2年後に総選挙を実施
 今回の合意は、現在政権を握るジョセフ・カビラ大統領を中心とする政府側と、反政府勢力の双方から閣僚を選出し、「暫定政権」という形で共同で国家運営に当たるというものだ。二年後には総選挙を実施し、一九六〇年にベルギーから独立して以来、初めての民意に沿った政権樹立を目指すというものである。
 具体的には、カビラ大統領の下に四人の副大統領ポストを新設し、現存する各政党と反政府グループから人選。その他三十六の閣僚ポストを与野党や反政府グループ、市民団体からの代表者で埋めることになっている。調印から五日後の今月七日にはジョセフ・カビラ大統領が暫定政権の元首として正式に就任した。

 だが、この合意に達するちょうど前日、コンゴ北東部のイツリ地区で、ヘマ族の住民約千人が、対立するレンドゥ族に銃やなたで虐殺される事件が発生。調印式に参加した反政府グループ代表が「歴史に刻まれる日であるとともに、血塗られた日」と語るように、民主化への第一歩に暗い影を落とす滑り出しとなった。

 コンゴで内紛が勃発(ぼっぱつ)したのは一九九八年八月。反政府勢力が武力で当時のローラン・カビラ大統領(二〇〇一年側近により射殺)を追い出しにかかったのが発端だ。隣国のルアンダウガンダは、カビラ政権が自国の安全を脅かしているとして反政府勢力に加担し、軍隊を投入。ジンバブエナミビアアンゴラがカビラ大統領支持に回り、ダイヤモンドなど豊かな鉱物資源の利権も絡んで、双方入り乱れて血みどろの戦いが繰り広げられた。

 四年半に及ぶ内戦の犠牲者は二百万人といわれ、戦死者よりも餓死や病死など、紛争に伴う食料や医薬品の不足などが原因の犠牲者が多いといわれる。国際救済委員会(IRC)が最近発表した調査報告では、犠牲者の数は推定四百万人を超えるともいわれている。

 これまで、和平努力がなされてこなかったわけではない。国連や周辺国の仲介により、九九年七月にはザンビアの首都ルサカでコンゴと介入五カ国が停戦協定に調印した。いわゆるルサカ合意である。協定では即時停戦と国連による平和維持部隊派遣を約束したが、後にカビラ大統領が国連部隊の展開を拒否したことで協定はあっけなく破られ、その後も局地的に内戦は継続した。

 状況に変化が見え始めたのは、〇一年一月、カビラ大統領暗殺の後である。カビラ大統領の長男ジョセフ・カビラ氏が二十九歳の若さで大統領に就任。同年二度も訪米し、ブッシュ大統領やアナン事務総長と会談、国連主導の和平プロセス関与を歓迎するなど、和平実現に意欲的な取り組みを見せた。その後、周辺介入国の部隊の撤退が始まり、南アフリカなど仲介で政府・反政府勢力が話し合いのテーブルに着くなど、和平への機運が高まった。

 今回の合意により、コンゴ解放運動(MLC)、コンゴ民主連合(RCD)など主要な反政府軍をはじめ、反政府各勢力は国軍としてひとつにまとめられる。だが、今回の虐殺事件のように、コンゴでは部族対立を主とする紛争の火種は幾つも存在し、それらが原因でいつまた紛争が再燃するかも分からない微妙な状況にあるといえる。

 アフリカ各国首脳は今回の合意を「歴史的合意」と希望的に見ているが、南ア在住のコンゴ系国民の間には「合意してもまた破られるだけ」「調印しただけで実効性はない」など否定的な見方が多い。民主化への第一段階としての暫定政権二年間で、カビラ大統領が立場の異なる人員で組織された内閣をどれだけまとめられるか、その指導力が問われることになろう。


コンゴ独立後の動き
1960年 ベルギーの植民地支配から独立
 65年 モブツ大統領がクーデターで実権掌握。
     97年まで30年に及ぶ長期支配
 97年 クーデターでローラン・カビラ大統領が
    政権掌握。国名をザイールから現在のコ
    ンゴ民主共和国に改称
 98年 内戦勃発。ルアンダウガンダが反政府
    側に、ジンバブエナミビアアンゴラ
    が政府側に参戦
 99年 コンゴと反政府勢力、周辺介入国が停戦
    協定に調印
2000年 停戦協定調印後も局地的紛争は継続
 01年 カビラ大統領暗殺。長男のジョセフ・カ
    ビラが大統領に就任
 02年 南アの仲介でカビラ大統領が暫定政権設
    置案受け入れ
 03年 カビラ大統領、反政府各勢力が暫定政権
    設置案に調印