旅の匂い

　時々匂いを思い出す．匂いを思い出すとその場所に無性に行きたくなる．どんな匂いかというと，うまく説明できない．何かの似た匂いを嗅いで思い出すというのではなく，私の深層が直接大脳皮質を刺激して内面から匂わせる，そんな感じなのだ．

　匂いというのは第三者に説明することが容易ではない．食べ物の味覚については，それが私たちの生活から余程かけ離れたものでない限り，ある程度説明することが出来る．ところが匂いについては，まず語彙に乏しい．キムチのような匂い，ニンニクみたいな匂い，といった漠然とした説明しかできない．ましてや街の匂いとなると．．．．インドの町並み．．．．アガルバッティ（香）の匂い，マサラの匂い，生ゴミの匂い，インド人の体臭，排気ガスの匂い，どぶ川の匂い，料理の匂い，これらが渾然となった匂いをどうやって説明しようか？

　そんな匂いをふと私の脳髄が思い出す．これは郷愁の匂いだろうか？

　フィリピンの旅行記はまだ．m(_ _)m